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中国の医療事情を視察するため上海を訪問しました(まとめ)

中国の医療事情を視察するため9月20日から23日まで上海を訪問しました。 3泊4日でしたが、20日は夜22時過ぎにマリオット・リバーサイドにチェックインし、21日、22日で計4つの病院を視察、22日の夜22時30分にホテルをチェックアウトし、23日の午前1時30分(日本時間午前2時30分)発のANAで帰国という実質2日間のスケジュールでした。

今回は中国医療の現場を見ることができ大変有意義でした。21日午前はFudan University(复旦大学)附属のShanghai Cancer Center、午後はFudan University Zhongshan Hospital(中山医院)、22日午前はShanghai Jiaotong University(上海交通大学)附属のRenji Hospital(仁済医院)、午後はShanghai Jiaotong University Ruijin Hospital(瑞金医院)を訪問し、主に肝臓のablationの現場を見てきました。訪問を終えて感じたことは、米国訪問の時と同様、日本の医療技術の細やかさでした。

日本の医療のほうがきめ細かいと思われたのは、次のような点です。 たとえば日本では肝癌の多くは初発例ならば2㎝程度、再発例ならば1㎝以下で見つかりますが、中国ではablationに回ってくる症例でも大部分は3㎝以上です。これは日本が肝癌の高危険群や治療後の患者を囲い込みきちんと検査を行なっているからと考えられます。中国のドクターは「日本の患者の方が幸せだ」、と言っていました。 私たちの施設では液晶モニターに必要に応じて各種画像を並べ比較検討することが可能です。しかし、中国では1枚のフィルムに6x8=48枚のCTやMRI画像を焼いたものをシャウカステンにかけて見ており、詳細な術前検討は難しいように思われます。 また、私たちの施設では多くの症例に行っている体位の工夫や人工腹水・人工胸水の使用、fusion imagingの利用などもあまりないようです。 超音波ガイド下の穿刺は米国と同様に、フリーハンドで行われています。このため、本当に病変の最大面に挿入されたかなどが不明です。CTガイド下の穿刺もやはり米国同様、角度と深さを決めてブラインドで穿刺を行ない、その後にCTで針先を確認する方法を取っています。 体表から5㎝に存在する病変でも超音波画像の深さを17㎝のまま観察して穿刺を行なっています。針先が病変の下縁を超えているかとか、グリソン鞘との関係はどうかなどは検討していないようです。 また、ここに門脈があります、ということは言っても、ここに8番の門脈の腹側枝があります、とは言いません。米国と同様、肝臓だけに特化してinterventionをしているわけではないため、肝臓の解剖学的知識は私たちの方があるように思いました。 原則として治療の翌日に退院とのことですが、これも日本よりも米国に近いようです。 私たちの施設では治療翌日にCTを撮り病変全体が焼灼されているかを評価しますが、中国では翌日に画像検査を行なうことは患者が多いため難しく、3週間後にMRIを実施するとのことでした。

ただし中国のドクターの技術は低くないと思われます。多くの症例をこなしていることもあり、その手技は無駄がなく迅速です。半日で5例程の治療を実施しています。 私たちの施設はJCI(Joint Commission International)を取得しており、患者確認なども厳密でスタッフ間の申し送りなども時間がかかります。一方、中国では患者の入れ替えにはほとんど時間を取られません。 なお、2つの施設では治療終了後に患者を治療台からストレチャーに移動したり、病棟に搬送したりを主に患者の親族が担当していたのには驚きました。

中国には最新の設備を持つ大規模病院も少なくありませんが(蘇州市立病院と蘇州大学附属第一病院を訪問(その2))、今回訪問した4つの病院はいずれも上海の旧市内にある病院で、建物も新しくはありません。しかし、中国でも有名な病院とのことで2000㎞もはなれた四川省などからも患者がやってきていました。

中国のドクターの間では「日本の医療環境は恵まれている。日本の医療のクオリティは高い」という評価のようでした。 たしかに、中国の病院の外来受診の様子などは大変混雑しており、これで十分なクオリティが保てるのかとも思いました。 日本の医療には細やかさがあり、現時点では日本医療の方が質的には上のように思います。一方、症例数という面では日本の施設の大半は中国の施設には敵わないのが現状です。 国際的な評価を保ち、世界をリードしていくためには日本国内だけに目を向けていてはならないと考えます。 そのきめ細かな医療技術をさらに磨いていくだけでなく、病院を拡大・集約して効率化を進めなくてはならない、と改めて考えさせられる視察でした。

椎名秀一朗

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